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日本近海の海底地形にある「空、自然、季節に関する名前」を持つ地物めぐり、第四回目(最終回)です。今回は第一回目で取り上げた「天文」に関する名前の続きとして、太陽系外の恒星/星座に関わる名を持つ海底地形をご紹介。かなり広範囲なので、A図の三つの白い長方形それぞれで拡大図を作図しました(北から南へB図、C図、D図)。
A図はもはや九州も見えないほど、九州〓パラオ海嶺に沿って南下した地域。でもB図のエリアは第一回目のB図とほぼ同じです。共通の目印として、以前にも出てきた「彗新海穴」を入れておきました。ふたつの地図を見比べると、彗星海山と新星海山の中間に位置するので彗新海穴と呼ばれることが分かるでしょう。(恒星海山と準星海山にはさまれた山が彗星海山です。)この辺りは一般的な天文用語をそのまま使った海山が多いのですね。
B図の南寄りには「北斗」「織女」「牽牛」という聞き覚えある言葉が出ています。これらの言葉は単独だと星に関係していると言い切れませんが、一連の流れから「北斗七星」「織女星(織姫星)」「牽牛星(彦星)」の意味で付けられたことは想像できます。
海の中の織女と牽牛はわずか50kmしか離れていませんから、毎日でもデート可能でしょう。でも牽牛海山の30km東には「明の明星海山」つまり金星(ビーナス)の海山があって、牽牛が誘惑に負けないだろうかと心配な状況であります…。(※金星由来では「明星海山」「明の明星海山」「金星海山」の三つがあって、それぞれ違う海山なので混乱しそう。)
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(C) 牽牛海山から南に向かって月や惑星関係の海底地形が連なります。そこを過ぎるといよいよC図とD図のエリア。C図「かじ星海山」のすぐ北北西の山が「冥王星海山」です。記事下に示したリストを見ると分かりますが、この辺りには星の配列に関する和名がたくさんあります。備考欄を見ずに何を差しているか全部分かりますか?
「七つ星」「ひしゃく星(柄杓星)」などを聞くとピンと来るかも知れませんが、これらは北斗七星のこと。北斗七星は北半球でとても目立つので、日本でも海外でもたくさんの呼び方や伝承が残っています。
少し変わった名では「そえ星海山」。「添え星」とは、北斗七星のひとつであるおおぐま座ζ星(ミザール・2.3等)のすぐ側にあるアルコル(4.0等)のこと。ミザールとアルコルは目でも確認できる二重星で、見かけ上は約12分角離れています。満月の直径が約30分角なので三分の一あまりですね。昔々は視力検査に使われたという逸話があります。現在の視力検査で「どっちが離れてますか?」に使われるランドルト環視力表などでは、分角で表した離角で1を割ってあげると視力の値になります。これに従うとミザールとアルコルが見分けられない人は視力0.083未満ということになるでしょう。でも、そもそも現代の汚れた星空では「4等星が見えない」という方も多数いらっしゃるので、星を使った視力検査はかなり複雑な状況ですね。
C図に出てくる星々は北極星からスタートして、北斗七星や春の大曲線に沿って一望できます。実際に星空を撮影した説明画像を下に掲載しておきます。