禺画像] 台風21号は既に南西諸島付近から遠ざかって昨日29日21時に熱帯低気圧になりましたが、またしても深い爪痕を残したようです。与那国島では9月28日に記録的な暴風雨となり、家屋や電柱が倒壊して島のほぼ全域で停電…。一日も早い復旧を願っています。(左は28日17:30の衛星画像/画像元:NICTサイエンスクラウド。)
28日15:41に記録された81.1m/sという瞬間最大風速は観測史上4位とのこと(右下表参照)。最大風速を見ても同じ与那国島で54.6m/s(観測史上7位)とあります。表には8位にも今年8月の記録が入っていますが、これは前回沖縄や九州地方などに大きな被害をもたらした台風15号のときでした。このクラスの風はまるで想像できません。「今日は風が強いなぁ」と思うときに風速を測ってもせいぜい10m/sオーバーくらい。20m/s越えたら歩けません。
私の住む茨城でもかつて台風直撃で暴風被害が出たことがありました。2002年の台風21号(おぉ、番号被ってる!)です。同年10月1日夜に上陸した台風は、中心が我が家のすぐ近くを通ったので今でも鮮明に覚えています。21時過ぎだったでしょうか、突然街中が停電になりました。後で知ったのですが、潮来市や鹿嶋市を通る送電線の鉄塔9基が倒壊・半壊したのです。この送電に支えられていた街は少なくありません。鉄塔は60m/s程度の風でも倒れない構造だそうですが、想定限界に近い暴風の連続、川や平坦地が多い場所で抵抗なく風が吹き抜ける環境、加えて基礎工事不良が悲劇を招いたとのことでした。
【瞬間最大風速・2015/9/30-0:00現在】
順位 |
日付 |
場所 |
風速
(m/s) |
1 |
1966年9月25日 |
静岡県・富士山 |
91.0 |
2 |
1966年9月5日 |
沖縄県・宮古島 |
85.3 |
3 |
1961年9月16日 |
高知県・室戸岬 |
84.5 |
4 |
2015年9月28日 |
沖縄県・与那国島 |
81.1 |
5 |
1970年8月13日 |
鹿児島県・名瀬 |
78.9 |
6 |
1956年9月8日 |
沖縄県・那覇 |
73.6 |
7 |
1964年9月25日 |
愛媛県・宇和島 |
72.3 |
8 |
2015年8月23日 |
沖縄県・石垣島 |
71.0 |
9 |
2006年9月16日 |
沖縄県・西表島 |
69.9 |
10 |
1970年8月21日 |
徳島県・剣山 |
69.0 |
※気象庁サイトの「歴代全国ランキング」による。
記録に残っている当時の瞬間最大風速は送電線に付いていた風速計の56.7m/s。でもよく考えれば風速はあくまで「点測定」です。実際の風は立体的に吹き、特異的に測定値より強いことだって十分あり得ます。1940年のタコマ・ナローズ橋倒壊のように、耐久試験すらできないレベルの暴風でどんな作用が起こるか机上シミュレーションだけでは不十分な気もしますね。
与那国島の81.1m/sって、この鉄塔崩壊の1.4倍以上ですよ。与那国島にも風力発電の風車があって、そのうちひとつの羽根が折れたそうです。国の風力発電ガイドラインを読む限りでは、最大風速70m/sくらいまで想定してるはずなのに、それでも壊れちゃうんですね。(土地の特徴にもよりますが一般的に最大風速と瞬間最大風速は1.5倍から2倍の関係。)自然というのは常に人の想像の斜め上を行き、「想定外」を起こすものなのでしょうか。
茨城の時は大きなニュースとなりましたが、今回は他の様々なニュースに紛れて関心ある人や関係者以外にはあまり注目されてない気がします。関心の有る無しは将来の用心に直結するので、少しでもその手助けになればと思う次第。
参考:
2015年・台風関連の記事(ブログ内)