金星は内合を過ぎた?過ぎてない?
2015-08-15


禺画像] 左は本日13時過ぎ、雲間に捉えた金星の姿。8月12日の画像とも比べてください。この金星は内合前でしょうか。それとも後でしょうか。この記事で取り上げるのはふたつの内合のややこしいお話しです。

2015年版天文年鑑によれば、昨日8月14日12:53に金星は内合を迎えました。つまり太陽と地球の間を東側から西側へ通り過ぎたということです。アストロアーツの8月の天文現象カレンダーにも14日の12:52と書いてありますね。(数分以内の違いは誤差の範囲でしょう。)

ところがよくよく軌道計算して確かめると、8月14日13時前に起こったのは「金星が太陽の南を通過した」ということ。ここで言う南とは地上の方角ではなく、空の中(天球)で位置を表す「赤道座標」での南側という意味です。この座標の北の端近くに「北極星」があることは有名ですが、地球の赤道を天球へ投影した「天の赤道」が基準なので、赤道座標系と呼ばれます。では「太陽の南を通過した」ことと「内合=金星が地球と太陽の間を通過」は等しい現象なのでしょうか?

実はそうとは言えないのです。合とか衝といった「地球と他の惑星との位置関係」を考える場合、本来は地球が太陽を回る公転面を基準にした「黄道座標系」で考えることが望ましいのです。国立天文台サイトの暦計算室/天象計算ページでは、特に断りがない限り黄道座標による合や衝の時間が算出されます。当サイトの惑星カレンダーも基本的に黄道座標に準じています。ざっくり言うと、赤道座標系が「地球の自転に都合良く決めた」のに対し、黄道座標系は「地球の公転に都合良く決めた」もの。それぞれ根本的に違うし得意不得意があって、使い分ける必要があります。ある程度高いレベルで観測したい方は、知らない人に説明できるくらい深く知っていることが大切でしょう。

禺画像]
右図はステラナビゲーターで描いた12日から18日までの金星と太陽の位置。赤道座標だと確かに14日と15日の間(赤点線位置)で金星と太陽が縦に並び、黄道座標なら16日過ぎ(黄点線位置)に両星が座標軸に対して縦に並びますね。座標系によって現象時刻が変わってしまうので、必要に応じて「赤経内合」「黄経内合」というように区別しますが、そもそも内合は黄経の内合なのに出回っている情報は前述のように赤経内合であることが多いです。どうしてこんなことに…?

ちなみに黄経内合は16日4:22頃。ですから本日最初の画像は「赤経内合の後だけれど、本来の黄経内合より前に撮影」した貴重なショットでした。今回は赤経内合に比べて黄経内合の金星が更に0.1秒角ほど大きくなり、光っている幅は0.05%ほど減少します。地上で見てても全く違いが分からないんですけどね(笑)

ふたつの座標系は「空のどこを見ているか」によって交差の角度が変わります。たまたま今回はしし座あたりで内合になったので差が出ましたが、おうし座とかさそり座付近では赤道座標と黄道座標がほぼ平行になり、合や衝が起きても時間差は目立ちません。そんなわけで、金星は明日16日朝にやっと太陽と地球の間を通過します。以降来年6月まで「明けの明星」として夜明けの空を美しく飾ってくれることでしょう。

参考:
2014年-2015年の金星拡大撮影(ブログ内)

[惑星・準惑星]

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