禺画像] 少し前の天リフ作業配信で冥王星のカロンがアマチュアレベルの望遠鏡で写るかどうか話が出ていて、興味をそそられました。少し古い記事ですが
Deep Sky Memoriesさんのチャレンジもすばらしい。
普段から手動での導入にこだわってきた私にとって、14等台の冥王星に望遠鏡を向けることがハードル高いと感じます。今はやぎ座にいるから赤緯は決して高くなく、10年後もまだやぎ座。色ズレ対策は必須かなぁ、うーん…などと考えつつも、昨晩は導入法をあれこれ思い描いてました。
普段遣いのミューロン210による重星撮影で、これまでの最小離角は1″台の半ばが限界でした。例えば右下画像はかに座のζ1星(2021年2月27日撮影)。三重星系で、左上に6.27″離れたC星系は問題なく分離しますが、右の雪だるま状になってるA・B星系は離角1.11″。レイリー・リミットの団子図みたいになっていて、分離してるとは言い難いですね。冥王星とカロンはこの半分。そして、ずっと暗いのです。露出が長くなるぶん、ブレも大きい(PSFの山が低く裾野が広い)でしょう。
ところでカロンの位置をどうやって確かめるのか、という問題は生じないのでしょうか。先日の
Taizoさんによる「Janus(ヤヌス)チャレンジ」と同じ問題です。離角はともかく方向角が分からなければ、楕円に写ってもそれがカロンなのか望遠鏡のブレなのか判別できませんよね。カロンは既に1978年に発見されていましたが、探査機ニュー・ホライズンズが接近して冥王星観測したのはわずか10年前。その成果を解析して天文暦に微調整が加えられたとしても極く最近のことと思われます。(私が知る範囲では2024年に改訂されています。)ちなみに衛星位置が比較的正確と思われるWinJuPOS(惑星観測家ご用達のソフト)では冥王星がメニューにありません。観測する人がいないと思われます。
さっそく最新の冥王星衛星群を記録する天文暦を使って自前計算したものと、Stellariumとを比べてみたのが冒頭のシミュレート画像。サンプルとして本日7月30日0:00JSTから三日間の位置です。赤線軌道はStellariumの表示、黄色点列(6時間間隔)は私の計算。この計算値はJPL-HORIZONSにてダブルチェックしており、少なくとも秒角の1/10の精度で合っています。(※これより小さな精度までHORIZONSで表示できないため確認できません。)全て反時計回りに公転してましたが、ご覧のように各衛星とも最大0.2秒角内外の位置ずれがありますね。『だいたい合ってる』ところが騙されやすいポイント。別にStellariumをディスってる訳じゃなく、がんばって改善して欲しいのです。(使ったことないけれど外部の天文暦を組み込めるようになってるみたいなので、きっと対応は進んでいるのでしょう。)現時点では自分で計算ソフトを作るか、
JPL-HORIZONSなど精度が信頼できるwebなどを利用して計算するしかありませんね。
禺画像] カロンはStellariumの表示より内側を回っていて、想定より離角が小さいようです。また地球から見て冥王星に近い時と遠い時があるため、遠い時を狙って撮影するほうが良いかも知れません。カロン以外は全て20等より暗いのでアマチュアでは無理でしょう。なお天王星や海王星の主な衛星はアマチュアの望遠鏡でも問題なく狙えますから試してみてください。左画像は天王星とその衛星のGIF動画です。(→参考:
2021年9月20日記事参照。)