禺画像] 二度あることは三度ある…。古の諺どおり、三つ目の恒星間飛行天体「3I/ATLAS」が7月始めに発見されました。軌道要素もだいぶ収束したので、現時点の計算を元に色々な側面を探ってみましょう。発見前に「A11pl3Z」、確定後は「3I/ATLAS」「C/2025 N1」「アトラス天体」などの呼称もありますが、本記事では3Iアトラスに統一します。「さんじゅういちアトラス」ではなく「さんあいアトラス」。英語の「I」はInterstellar(恒星間)のイニシャル。
自作プログラムでたくさん図を描きました。軌道要素は7月14日3時UT時点のIAU最新値。また星図ベースはステラナビゲーターによります。みなさんの理解の手助けになれば幸いです。
★実速度はどれくらい?
左上図は過去発見された「1I/オウムアムア」「2I/ボリゾフ」とともに3Iアトラスの太陽系に対する相対速度を描いたグラフ。基準は各天体が最も太陽に接近した日で、プラスマイナス360日間を比較しました。全体として3天体の中で3Iアトラスが一番速いのですが、オウムアムアが太陽に接近していた1ヶ月間ほどは負けてますね。これはオウムアムアが太陽に極めて近いところを通ったのに対し、3Iアトラスの近日点距離は地球軌道半径(1AU:天文単位)より遠いからです。
仮に3天体が同じ平面を運動するとして、統一スケールで軌道を描くと下A1図のようになるでしょう。短周期で太陽を回るハレー彗星も入れてみました。3天体の軌道はいずれもぶっ飛んでますが、太陽にどれだけ近づいたかで冒頭グラフの中央盛り上がりに差が出るんだなと直感できますね。また2Iボリゾフより太陽に近づくのに3Iアトラスの軌道があまり曲がってないのは太陽系への進入速度が速すぎるせい。図の中で火星軌道に接してるように見える3Iアトラスですが、実はリアルでも接近します。下A2図は主な太陽系天体との距離を図化したもの。今年10月3日は火星に0.194AUまで接近、太陽系から去って行く来年3月16日には木星に0.359AUまで接近しちゃうみたい。
3Iアトラスは新幹線の700倍という高速度で太陽系に進入、太陽による重力アシストを得て、ほんのちょっと方向を変えて飛び去る天体だと分かりました。ちょうど探査機ボイジャーが惑星を使って飛行方向を変えた「スイングバイ」の技術にそっくり。遠くに棲む生命体が太陽系調査のために飛ばした巨大建造物、というトンデモ設定が脳裏に浮かんでしまいました。
★どこから来てどこへ行く?
具体的にどこから来て、どこへ向かうのでしょう?他の恒星につかまりそうな何億年も前や未来は分かりませんが、数百年前後なら計算できます。下B1〓B3図は現在プラスマイナス45年の位置を星図に落とし込んだもの(地心計算)。B1図を見ると1980年ごろは発見位置から東にわずか22°しか離れていない、同じいて座にいました。星が密集する天の川をひたすら漕ぎ進んでいたのですね。
軌道傾斜が約175°だから、地球公転面とほぼ平行に逆周りでやって来たことになります。今年いっぱいは黄道に沿ってしし座やかに座まで逆行。来春以降はふたご座の方向へ収束してゆきます。いつか別の恒星圏に捉まることはあるのでしょうか?なお他の2天体がやって来た方向や向かう先はそれぞれ
1Iオウムアムアの記事と