ロジェストヴェンスキーを観る
2024-04-02


禺画像] 「月世界への招待」サイトで東田さんが月面北極にあるロジェストヴェンスキーという大きなクレーターが見える時期と紹介されており、実際に観察されていました(撮影日記の3月31日および4月1日)。このクレーター中心経度は約-158.44°、つまり完全に裏側にあるのですが、クレーターが大きいことや月面北極に極めて近いことが幸いし、秤動が良ければほぼ全容を見ることができます。ただ、そうした機会はなかなかなくて、この3月末から4月頭が絶好のチャンスだったのでした。後述する見やすさ計算で2020年から2030年まで算出した中では、来年2025年3月22日明け方に次いで条件が良かったのが今朝の月です。

私もロジェストヴェンスキーの壁までしか見たことが無かったため(→※2019年8月21日記事など)、このチャンスを活かしてクレーター底まで観ることができないかと模索。何しろ今の時期は月赤緯が低く、通常私が望遠鏡設置可能な範囲から全く見えないのです。でも不安定な天気続きの中で今朝は唯一晴れが期待できたので、思い切ってかなり北の空き地まで機材を運んでみました。その甲斐あって無事ロジェストヴェンスキーを拝むことができました(左上画像)。シーイングは目茶苦茶でしたが、雲や風が無かったのは幸いでした。

リム近くの裏側地形の見やすさはなかなか判断しづらいけれど、予測できない天候以外…計算できる要素は予め見積もっておくことが可能です。下A図は2022年5月11日記事に掲載したもの。この角P(観察者・対象地形・月心が作る角度)は計算できるので、秤動によって縁ギリギリをさまよう地形の見やすさの目安となるでしょう。下B図はロジェストヴェンスキー中心位置に関して角Pを求めたもの(薄青線)。日時によってかなりふらつきますね。この中から更に「日が沈んでいる」「月高度が10°以上」「地形が太陽に照らされている」「角Pが92°以上」といった別の条件を与えて絞り込んだものが赤線部分。極端にチャンスが少なくなることが分かります。

今後5月頭と末ごろもう一度チャンスがあり、6月以降はほとんど見えなくなります。このまま今年のチャンスは終わってしまうかと思いきや、面白いことに10月6日や11月4日の夕方に細い月の北側カスプが北極点をオーバーハングし、「逆光のロジェストヴェンスキー」が見える可能性があります。もし晴れたら望遠鏡を向けてみてください。ただし日没後では月高度が足りない時期のため、できるだけ日没前からの観察が望ましいでしょう。

禺画像]
ちなみにロジェストヴェンスキーの見ごろは年々少しずつ早まります。前出の2019年8月21日ごろは今回と同様の条件でした。今年までの5年間で春まで早まったことになり、2030年ごろには晩秋の11月ごろしし座の足元で見えるようになって、高度的にかなり見やすいでしょう。もちろん秤動と密接に関係するため毎年見やすい時期がある訳では無く、おおよそ5、6年ごとにピークが訪れると言ったところでしょう。秤動図の振れる向きが一定のパターンに戻るのに5、6年かかると言うことですね。これは他のリム地形でも同様です。ただし北極や南極に極めて近い領域の場合、秤動図が線状になって完全に避けられる時期以外は全く見えない訳では無いため、最良の条件にこだわらなければ「ちょっとは見える」状態が比較的起きやすいとも言えます。現に去年や一昨年もロジェストヴェンスキーは見えていましたし、来年も再来年も見えます。


続きを読む

[月]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット