強いまま高緯度までやってきた台風14号
2022-09-19


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禺画像] ここ数日にわたり南西諸島や西日本を中心に猛威を振るっている台風14号。今日19日9時現在、中心気圧が975hPaまで高まったものの、17日頃は「日本近海で中心気圧が極めて低い」という危険な台風の特徴を見せていました。左画像は17日15:00の気象衛星ひまわり画像です(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。

気象庁ベストトラックで調べたところ、1951年から去年2021年までの全台風1856個のうち、日本領域に接近・通過・上陸したものは818個(全体の44%)。この中で「経路中のどこかで中心気圧が930hPa以下」になったものは217個ありました。818個全てを描いたのが下A図の台風マップ。蜘蛛の巣のごとく絡んだ細かい線が台風の中心移動経路で、930hPa以下になった区間は色分けした太線になっています。

ほとんどのケースで最低気圧区間は北緯10度から30度に収まります。ですから四島まではどうにか耐え忍べているのでしょう(※九州南端の佐多岬で北緯約31.0度)。逆に言うと南西諸島や小笠原諸島は常に危険に晒されているのです。加えて、勢力が強いまま、たまに北緯30度以北の“高緯度”までやって来る台風では本州の緯度でも大災害になってしまうわけです。下B図はA図を拡大したものに加えて今回の台風14号を描き足した地図。九州・四国・本州に達した台風は悪名高いものばかりであると分かるでしょう。南西諸島を襲った強い台風は更に多く、四島の比ではないことも忘れてはなりません。

今回の14号は過去の凶悪台風に匹敵し、16日21時に925hPa、17日3時には910hPaを記録、18日3時に920hPa(北緯28.5度)へ上がり始めるまで丸一日も最低気圧を記録し続けました。18日19時ごろ鹿児島に上陸したとき935hPaまで上がっていたのは不幸中の幸いでしょうか。それでも気象庁の統計を見ると歴代4位に匹敵していることが分かりますね。完全に通り過ぎるまでまだ油断できません。気をつけてお過ごしください。まだ台風発生ピークは終わっていませんから。



【追記】参考までに、風速記録されている1977年以降2021年までの1149個の台風全てを使い、経度緯度とも0.1度刻みのACE値(Accumulated Cyclone Energy/台風蓄積エネルギー)の分布を算出し、地図化してみました(上C図)。これを見ると強い風速を維持した台風はフィリピン東部から南西諸島にかけての領域に集中することが分かります。領域はA図の太線が込み合ったところに一致し、中心気圧低下と風速とに強い相関関係があることも分かるでしょう。沖縄から先島諸島はもちろん、もっと北側の奄美や屋久島あたりまで強いエネルギーを保つ範囲がカバーされています。東側の小笠原諸島も入っていますね。なおACE値はベストトラックの時間分解能=6時間おきの記録に準じています。色のついてないところは台風が通過していないという訳ではありません。例えば移動が速い台風では点線のような飛び飛びのACE分布になります(北緯40度以上で顕著に現れていますね)。また、あくまで中心点での算出であり、台風の広がりは考慮されません。この点はご注意ください。

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