史上2番目の長さになった黒潮大蛇行
2020-03-08


禺画像]
A.2020年2月24日
一見して深い関係がないような自然変化が気象に影響し、時に大きな災害へと発展することがあります。日本列島の南側に沿って流れる黒潮もそのひとつ。黒潮の流れが極端に大回りする「黒潮大蛇行」が続いています。

ニュース欄が新型肺炎で埋め尽くされているため全く報道されないようですが、先週3月2日に気象庁から2019年の黒潮状況が発表されました。2017年8月に始まった黒潮大蛇行は2019年末まで続いており、JAMSTECの予報などと合わせると今現在もまだ継続中。従って継続期間は2年8ヶ月目に突入し、観測史上2番目の長さになりました。(※潮流の距離ではなく期間の話です、念のため。)

潮の流れはいくつかの方法で知ることができますが、私が日ごろから注目しているのは気象衛星ひまわりによる赤外画像。この画像から雲や地面、海洋の大局的な温度分布を知ることができます。潮の流れは海表面の温度に反映されるため、太平洋側に雲ひとつない夜はマーブリング(墨流し)のように見事な対流模様が浮かび上がるんです。昼間は太陽の照り返しなど余計な赤外光が混じるため、純粋な潮の流れを見るなら夜間のほうが良いように思います。

上A画像は直近で見ることができた今年2月24日21:00JSTの画像(元画像:RAMMB、地図・画像処理等は筆者)。この画像は可視光天気図などで見る白黒を逆転させ、冷たいところ…例えば雲頭頂・雪・海氷・冷えた地面などは暗く、暖かいところは明るく表示してます。更に海面の温度分布が見やすいようにコントラストを強めました。四国沖から伊豆諸島にかけて、南側に膨らんだ暗い影が見えるでしょう。親潮は暗い影を避けるように海岸から離れたところを遠回りしているのです。(実際はこの大蛇行の影響で遠州灘や熊野灘付近の海水が暖まらず、暗く見えるのです。)因みに父島のちょっと西に見える明るい点像は西之島の噴火。これも随分続いてますね。

禺画像]
B.2018年3月14日
約2年前、2018年3月14日21:00JSTの同範囲画像も右B画像として掲載しました。この頃は現在よりも鮮明で、見つける度に驚いたものです。まるでオリオン座にある馬頭星雲のような影ですね。比較すると現在とは流れが違っており、以前は紀伊水道沖合で顕著な離岸が見られなかったことが分かるでしょう。大蛇行は時期と共に緩やかな変化があるようです。双方の日付におけるNOAAのSST図(Sea Surface Tempelature)も下C図に掲載しておきましたので比較してみてください。

前出の気象庁サイトにも書いてありますが、黒潮大蛇行の判断基準は次のふたつの事象発生だそうです。


北緯32度は八丈島の約1度南側に相当し、概ね宮崎県宮崎市と同緯度。上のA・B画像の暗い部分は基準より1度以上南下してますね。1961年以降の各観測データが気象庁サイトから公開されているので、グラフ化することができます(下D・E図)。同サイトに載っている既成のグラフを見るより、やはり自力で描いたほうがしっかり頭に残るでしょう。1960年以前の観測値がないため、1961年から1962年末頃発生していた大蛇行に関しては開始時期と継続期間が分かりません。従って、今続いている大蛇行は期間が分かる範囲で2位なのです。


続きを読む

[空模様・天気・気象]
[自然環境・生物]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット