ブラックホール撮影成功にあやかってM87観察
2019-04-13


禺画像] このところ世界初の「ブラックホール撮影に成功」というニュースが世界中を賑わせていますね。SFの想像世界や理論話の域を出なかったブラックホール。よもや自分が生きている間に生写真を見ることができたなんて、にわかには信じ難い思いです。

ところで今回撮影対象になった天体は私たち一般市民に手の届かないようなものではなく、メシエ天体のひとつ「M87」というメジャーな系外銀河です。おとめ座の一角にあって、今頃だと夜半前に南の中空に見えているんですよ。3月14日記事で「マルカリアン・チェーン」を取り上げましたが、この写野にも写り込んでいます(左画像)。昨夕は雲が出ていたものの、日付が13日に変わる頃から晴れ間が広がり、明け方にかけて冬のような美しい星空になりました。ちょうど月も沈む頃だったので良い機会だと思い、M87を拡大撮影してみました。

ご存じの方も多いトリビアですが、特撮映画ウルトラマンに出てくる彼らの故郷「光の国」はM78星雲にあるという設定で、これはもともと企画された時に「M87星雲」だったのが誤記され、そのまま使われてしまったとのことです。もし「M87星雲」のままだったら、今頃「ブラックホール×ウルトラマン」みたいなコラボ企画が行われていたかも…?(※ちなみに昔は銀河も星雲と表現していました。アンドロメダ星雲とかソンブレロ星雲とか。)

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M87は楕円銀河で、はっきりした腕が渦を巻いているようなタイプではありません。小型望遠鏡で見るとぼーっと薄暗く光っているだけの(言い方は悪いですが)面白味のない銀河です。ただ、中心部を拡大撮影すると「銀河核から吹き出す宇宙ジェット」が分かる場合があります。このジェットは意外に明るいため、空と機材のコンディションさえ良ければアマチュアでも写し取れるでしょう。ただし銀河中心自体も星が密集して明るいですから、コントラストの微調整など画像処理技術が必要です。

右は今朝撮影したM87の拡大画像。光害あふれる街中で、市販望遠鏡+一眼レフカメラ(無改造)によるわずか1時間程度の露光です。銀河の中心付近に特殊な画像処理を施すと、西北西方向(右方向やや上向き)に青白い出っ張りが見えてきます(緑矩形内)。(※ハッブル宇宙望遠鏡による超拡大画像がNASA-Astronomy Picture of the Dayにありますのでご覧ください。ただしHST画像は北を上にして撮っていませんので、ジェットの向きが違いますからご注意。)このようなプラズマガスなどの宇宙ジェットは銀河中心にある巨大重力源活動が原因とされ、今回の「イベント・ホライズン・テレスコープ」プロジェクトによるブラックホール撮影につながった次第。

ニュースやブログの画像を見るだけなら簡単ですが、背後の苦労は分かりません。こうやって自力で撮影してみると、このジェットを写すだけでもどれほど神経を使う細かい作業なのか実感できるでしょう。適切な機材をお持ちの方はぜひ挑戦してみてください。撮影しなくても、M87を探し出すだけでも十分に素晴らしい体験です。ブラックホール撮影の快挙をご自身の経験の一端として共有してはいかがでしょうか。今回は私も西へ傾いてからの撮影で十分な露光ではなかったため、いずれ拡大率を上げてじっくり狙いたいと思います。

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