宵にも明け方にも見えない明星
2018-10-27


禺画像] 金星は26日23:16JSTに内合(黄経内合)を迎えました。右画像は太陽観測衛星SOHOサイトから引用で、LASCO C3カメラに写り込んだ太陽至近の金星。中央○印が太陽位置、下側にギラギラ光っているのが金星ですね。10月24日記事にも三日ほど前のLASCO C3カメラ画像を掲載してますから、比べてみましょう。

一般には外合から内合までを「宵の明星」、内合から次の外合までを「明けの明星」と見なしますから、本日27日は明けの明星になったはずです。でも実際はなっていません。その様子をシミュレーションで詳しく見ていきましょう。

下A・B図は27日の日の出直後と日の入り直前に金星がどこにいたかを示したもの。Stellariumで太陽中心が地平線に重なった瞬間を描いています。図を見るとどちらも地平線より下に金星がいますね。ということは、太陽が昇る前に金星は見えない(=明けの明星ではない)ですし、日の入り後にも金星は見えない(=宵の明星ではない)ということです。

金星は必ず宵か明けかに分かれるとは限らず、内合や外合の際に太陽の北側を通るか南側を通るかで変わります。今回のように南側を通る場合は「宵にも明け方にも見えない期間」が存在し、北側を通る場合は「宵にも明け方にも見える期間」が存在します(→参考記事)。これは特に珍しいことではありません。



どれくらいの期間になるかは、上図内の角Aや角Bがどれくらいになるかに依存するでしょう。この図は北緯36.0°、東経140.0°という切りの良い場所(茨城県内に実在)でシミュレートしました。天体解説本やサイトには「北緯N°で見る天の北極は高度N°に見え、日の出の太陽は季節に寄らず地平に対して90-N°の傾斜で登る」と書いてあることが多いのですが、これは正しくありません。登る(沈む)傾斜は日出没の方位にも影響も受けるんです。上図内の角Aや角Bを正確に書くと次の様になります。



方位角は真北を0°として東回りに測り、真東が90°、真南が180°、真西が270°。上のcosの項は方位によって太陽が昇る(沈む)傾斜の変化係数。冬至や夏至でcosの項は最も小さくなり、従って登る(沈む)瞬間の傾斜は1割以上も緩やかになるのです。なお朝から夕方までに太陽は黄道上をほんの少し移動するので、厳密には角Aと角Bは異なります。例えば本日10月27日だと約0.0473°だけ角Bのほうが小さいですね。この程度の細かい値を無視するなら、ほぼ一緒と見なしても差し支えありません。

禺画像]
さて、A・B図は赤道座標系で描くとひとまとめにできます。それが右図。「赤道座標系で描く」というのは、天の南北を上下方向にして描くと言うことです。この様に描くと、太陽は右へ右へ動くように見えますが、実際に変わるのは太陽位置ではなく、地球が逆向きに自転しているから、ということはご存じでしょう。


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