今年6月1日に打ち上げが成功した準天頂衛星「みちびき2号」。そして間もなく打ち上げが予定されている「みちびき3号」(右下画像・出典:内閣府宇宙開発戦略推進事務局)。「衛星の軌道」を設計しながら、準天頂衛星とはどういうものか理解してみましょう。
今や私たちの生活は地球周回型の人工衛星なしで考えることができません。BS放送に使われる放送衛星、ネットや電話に欠かせない通信衛星、気象変化や台風状況などをほぼリアルタイムに得る気象衛星等々。また日常で意識することはありませんが、国家の安全を守る軍事衛星や、純粋に地球環境を調査する科学衛星も挙げられるでしょう。
その中のひとつに「自分の位置を知る」ための測位衛星と呼ばれる人工衛星のグループ(衛星コンステレーション)があります。俗にGPS(Global Positioning System)と言われるものはこれに属する米国の衛星群ですが、他の国のシステムも多様にあります。一連の衛星群を使った「位置を知るための体系」をGNSS(Global Navigation Satellite System):衛星測位/衛星航法システムと言います。地上だけでなく衛星とやり取りできる範囲なら宇宙空間でも使えます。スペースシャトルの飛行もGPS航法を利用したと毛利宇宙飛行士がおっしゃってました。
この衛星は一機あれば事足りるわけではなく、多くの場合4機以上の衛星を同時補足しないと位置特定ができません。今日現在GPS衛星は約30機がタイミングをずらして飛び回っており、日本の空に入れ替わり立ち替わり常時10機前後姿を見せています。(GPS以外の測位衛星も合わせたら50機前後!)
「位置を知るってそんなに重要?」と思う方も多いでしょう。でも考えてみてください。どうやって飛行機が衝突せず世界中飛べますか?目印のない遠洋で船舶が迷子にならないための方法は?大地震が起こる前兆として大地がわずかに動くのを捕捉する手段は?これらが実現できるのも全てGNSSのおかげです。現在のカーナビ・街ナビ、徘徊者捜索、動物生態調査、将来の自動運転や自動配送に至るまでGNSSの恩恵は計り知れません。
禺画像] ところで日本のように中緯度の国がGNSSを組み上げるためには、ちょっとした苦労があります。衛星を使って位置を知るには「人工衛星とやり取りできる」つまり「衛星が空に見える」ことが必須条件。じゃ、私たちが地面に立って見上げる空って、具体的に宇宙のどこを見ているのでしょう?これ意外に想像しにくいんですよね。
左図はこのことを簡単に描いたもの。私たちが感じるのは水平に広がる地面と、垂直上向きの天頂を中心に広がる空。でも地軸を立てて地球全体を考えると、個人が見る空は斜めの天窓となります。しかも地球は24時間周期で自転しますから、天窓の方向は1日1回回るのです。また大抵はビルや樹木など多くの物体が空を隠しているから、場所によっては窓が狭いでしょう。更に日本は南から北まで約25°も緯度差があり、これは天頂方向の差に等しい値。私たちが見ている宇宙は「小さな窓越しに時々刻々変化する景色で、場所によっても差がある」のです。日本の全ての地域で満足できる人工衛星を都合よく飛ばすことなんてできるのでしょうか?
気象衛星やBS、CSなどの「赤道静止衛星」を考えてみましょう。BS・CSアンテナを設置してる方はお分かりでしょうが、アンテナの向きが衛星のいる方向ですね。一日一回ズレてしまう…なんてことありません。これは衛星が天の赤道に沿って公転し、公転周期を地球自転にピッタリ合わせているから。走ってるバスの窓から見ると、同速度で併走する車が止まって見えるでしょう?