2015年7月7日に新しい気象衛星(ひまわり8号)による観測が始まって、一ヶ月半が経とうとしています。空間的・時間的、あるいは周波数的な解像度の飛躍的な向上で、様々な気象解析に役立っていることでしょう。ごく普通の一般市民である私のような者でも、インターネットで24時間衛星画像を見ることができるのはなんともありがたい時代。
禺画像] ところで天気予報で目にする衛星画像は、人の目に映るように撮影した「可視画像」ではなく「赤外画像」です。可視光は夜間に写せないからです。また様々な赤外線を捉えることで、雲の動きだけでなく水蒸気や黄砂の流れ、火山活動、海面温度なども捉えることが可能です。
それでも私は見た目に近い可視画像が好きです。ひまわり画像がネットで見られるようになった2000年台前半からの大ファン(笑)。ありがたいことに、ひまわり8号では可視画像も24時間配信され、「真っ暗な地球」も見られるようになりました。(以前は明け方から宵までの時間限定配信でした。)こんなのを見て喜んでいる人はかなり少ないだろうとは思いますが、夜を含む地球を見ることで気付けることも多いです。
たとえば、7月15日と8月15日を可視光で比べてみましょう(左上画像・画像元:NICTサイエンスクラウド)。上下段とも右側から2時、6時、12時、18時、22時の画像を使っています。1ヶ月の差があるふたつの画像を比べ、雲の状況など気象以外で、どれだけ違いを見つけられますか?
一例として、実は光の当たり方…太陽が地球を照らす方向が違っています。具体的に各日の6時の画像で比べましょう(右画像)。赤線は赤道位置、青点線は欠け際の南北を結ぶ線、緑線は地球中心から見た太陽の方向、黄矢印は太陽光がやってくる向きです。7月に比べ8月のほうが赤道側に近くなった浅い角度から地球が照らされていますね。そういう目でもう一度最初の画像の「三日月形地球」を見ると、欠け際の位置が結構違うことに気付けます。
角度を具体的に計算すると、7月15日は地球中心から見て約21.7度北寄りに太陽がありました。「北緯21.7度では太陽が天頂を通る」と言い換えることもできます。対して8月15日は14.3度でした。一番北に寄るのはご存じ「夏至」で、このときは23.4度。北緯23.4度付近が「北回帰線」と呼ばれ、夏至に影が無くなることは有名ですね。また春分・秋分は0度となり、赤道上で太陽が真上を通ります。その日の朝や夕方の衛星画像を見ると、真横から太陽が地球を照らす様子を見ることができるでしょう。秋分から春分の朝は、いよいよ太陽が右斜め下から照らすような画像となります。日本では昼でも太陽が高く昇らず、結果として気温が上がらない寒い季節を迎えるのです。
この解説は衛星が地球との位置関係を変えない前提で作っているため、「実は静止衛星は微妙に動くよ」といったことは一段深い細かな話です。でも見た目で分かるほどの衛星画像の変化は中学や高校の知識でちゃんと理解できるでしょう。地球ウォッチングを楽しめれば、季節や日差しの変化、白夜、台風の発生位置など様々な理由が面白いほど「視覚的に」分かるようになります。
参考:
気象庁(外部サイト)