禺画像] 昨夕は月面北半球にあるプラトー・クレーターでRay現象が予報されていました(→
2023年11月17日記事参照)。当地・茨城県南部は午後から雲が広がり、天気予報も夜半までは雲が多いとのこと。天気ばかりは時の運。どうにもなりません。
それでも万が一のために色々準備していると、16時ごろから晴れ間が広がりました。隣家の屋根から月が顔をのぞかせています。このまま3時間くらい持ちこたえてくれと念じつつ、撮影準備を進めます。ときおり雲が通過するものの、予定時刻の18時が近づくと安定した良い空になりました。
今回の目標はふたつ。ひとつはプラトーRay現象の開始時刻を見極めること。もうひとつは「月世界への招待」ブログの東田さんが
2023年3月30日の観察日記で紹介されていた「グルイテュイゼン男爵の月面都市」を観察すること。他にも色々ありましたが、とりあえずこの二つを叶えたい。前述のRay予報は18:00ごろ見え始まるということなのですが、念のため20分前から撮影開始(冒頭画像)。10分おきに同一条件で撮り進める予定でした。ところが17:50までは順調に進んだものの、再び雲が頻繁に横切るようになってしまい、18時以降は朧月、18:10以降は完全に曇ってしまいました。再び月が見えてきたのは19時ごろでした。
今回はRayに注目するため、撮影と画像処理は露出オーバー気味に行っています。シーイング対策としてフィルターを付けている都合で反射ゴーストが出ています。低照度の対象ですから背景に対するコントラストが著しく低いため、本来ならノーフィルターで撮影すべきだったかも、というのは後で気付いた反省点です。
Ray現象そのものをモニターで最初に確認できたのは17:48ごろ。ゲインを上げ下げしている途中に微かな光の筋がクレーター底を照らし始めていたのです。カメラに写ったのは17:53ごろ。18:00の撮影でもよく分かります(右画像)。ただし普通に撮ったのではダメで、真っ白になるくらい露出を伸ばしたりゲインを上げないとダメでした。まぁ、これは予想していた通り。
赤矢印の隙間から入った太陽光が黄色楕円点線のところを細長く照らしているのが分かるでしょうか。このスリムなスリット光線こそRay現象として理想的な姿。ちょっと大げさですが、夢にまで見た光景でした。
禺画像] 1時間以上過ぎた19:11の撮影(左画像)では、もう露出オーバで撮らなくてもクレーター内に入り込むいくつものRayが写るようになりました。ここまで過ぎると林の影みたいになって、他のクレーターでも起こる「一般的なRay現象」の見え方です。今回は「プラトーに最初に差し込む一筋の光」を捉えることにあったので、まずは成功と言えましょう。
ピコ山の長い影も印象的。アルプス谷のあいだを走る細い谷も写りました。Lunar100の99番目「Ina」もかろうじて写ってますね。雲のせいもあるけれど、日が暮れる前や薄明時のほうがシーイングは安定していました。海外の有名月面写真家が「日没少し前のほうが写りが良い」とおっしゃっていた意味が少し分かりました。